マーケティングの話

あなたは自分を「何者」と定義しますか?えっ、まさか!?

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こんにちは、きくちはらです。

このブログは、数字の苦手な経営者さんに話題のニュースを基に、会計的視点、マーケティング的視点、マネジメント的視点などから、あなたのビジネスのヒントになる情報をお届けしています。

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マーケティング近視眼

あなたは「マーケティング近視眼」という言葉をご存知ですか?これはセオドア・レビット(元ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授)が1960年にハーバード・ビジネス・レビューで提唱した概念で「自分は何者か?」を定義する時の重要なヒントになります。

ㇾビットは「マーケティング近視眼」に陥り衰退した産業の例としてアメリカの鉄道事業者を上げています。かつてアメリカの鉄道は移動手段の中心的な存在で、自分たちを「鉄道産業」と定義していました。時代と共に旅行や貨物などの市場が急拡大していったにもかかわらず、鉄道事業者はそれらのニーズをトラック、バス、飛行機など後発の企業に奪われて衰退していったのです。もし鉄道事業者が自分たちを「輸送業者」と定義していたら、先発事業者のアドバンテージや資金力・ブランド力を駆使して、トラックやバスも利用した運送会社、航空会社、旅行会社に進化できたはずなのに…。

映画→テレビ→ネット

同じようなことは映像の世界にも当てはまります。最初にこの世界で脚光を浴びたのは映画界です。そして映画界の関係者は自分たちを「映画産業」と定義しました。その後テレビが誕生しても「自分たちは映画産業だから」、「自分は映画俳優だから」と、テレビ界よりも上にいるんだとこれまで通りのやり方を貫いたのです。その結果、ドラマやバラエティ・スポーツを展開するテレビは映像の世界の中心になりました。現代ではさらにネットに移行するのも時間の問題と言われています。映画界がもしも自分たちを「映像産業」あるいは「エンターテイメント産業」と定義していたら、媒体は変わっても映像の世界の中心的存在であり続けたかもしれません。

スーツケース業界のマーケティング近視眼

ステフ・コーリー氏とジェン・ルビオ氏は、スーツケース業界の既存メーカーは「マーケティング近視眼」に陥っていると見たのか、2015年、新しい価値観のスーツケースメーカーAwayを創業しました。

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創業2年で旅を愛する人たちから絶大な支持を得たスーツケースメーカー「Away」とは?

2015年に創業したスーツケースメーカー「Away」が2018年6月にシリーズCの投資ラウンドで5000万ドル(約90億円)の資金調達に成功しました。創業3年の新興スーツケースメーカーは、225ドル(約2万5000円)という比較的安価なスーツケースを武器に、320億ドル(約3兆5000億円)という巨大な旅行用カバン市場で躍進し続けています。

Up, up, and Away: the luggage upstart taking on industry giants
https://www.fastcompany.com/40590583/up-up-and-away-the-luggage-upstart-taking-on-industry-giants

Fast Companyのエリザベス・セグラン氏は、バカンスでイタリア旅行に出かけました。カフェでマキアートを飲んだり、美術館に行ったりと、休暇を満喫したセグラン氏は、フィレンツェやアトランタ、フロリダの空港などいたるところで「Away」ブランドのスーツケースを持つ旅行者を見かけたそうです。2015年までAwayというブランドが存在していなかったという事実を考えれば、わずか2年半でスーツケースメーカーとして築き上げたAwayの存在感は驚くべきものだとのこと。

この新興のスーツケースメーカーAwayを創業したステフ・コーリー氏とジェン・ルビオ氏は、メガネブランド「Warby Parker」で働いていたころに知り合いました。コーリー氏がサプライチェーン構築を、ルビオ氏がソーシャルメディアを手掛けたWarby Parkerは、驚くべき速度でオンラインのメガネ販売として、規模を拡大することに成功しました。

「旅行」という共通の趣味を持つ二人はすぐに意気投合すると、いつしか「簡単には壊れない手ごろな価格のスーツケースが欲しい」という互いの欲求を共有し、その情熱のあまり二人で旅行者のためのスーツケースメーカーを立ち上げることになりました。こうしてできたのが「Away」です。

左がルビオ氏で右がコーリー氏。

旅行向けスーツケースの市場は大きく二つに分かれています。一つは、Rimowaに代表される高級ブランドが出す1000ドル(約11万円)クラスの高価格スーツケース。そして、もう一つが100ドル(約1万1000円)強の低価格スーツケースです。旅行好きの二人にいわせると、この間の価格帯には、手ごろな代替品がないとコーリー氏とルビオ氏は感じていました。「私たちの周りには、自分のスーツケースを心から愛している人はいませんでした。これは私たちにとっては不思議なことでした。消費者に真に訴えかけ、消費者が愛着を抱くブランドはなかったのです」とルビオ氏は述べています。

二人はForerunner VenturesやAccel partnersから250万ドル(約2億8000万円)の出資を受けると、コーリー氏をCEOに、ルビオ氏を副社長兼チーフブランドオフィサーに据えてAwayを創業しました。2016年1月に最初のハードシェルタイプのキャリーオン・スーツケース4色を価格225ドル(約2万5000円)で発売しました。これはTumiのスーツケースの約半額で、SamsoniteAmerican Touristerなどのものと同等の価格ですが、「生涯保証」というユニークな特典がつけられました。旅行者にとって壊れるリスクを気にすることなく末永く使えるという安心感を得られる生涯保証は魅力的で、最初の1年間に5万台のスーツケースを売ることに成功したとのこと。

創業1年目から利益を上げているという事実は投資家たちからの出資を引き出しやすい条件でもあり、AwayはシリーズCラウンドで5000万ドル(約55億円)の資金調達にも成功。Awayはわずか2年半で8100万ドル(約90億円)の出資を得ることに成功しています。

セグラン氏によると、デジタルネイティブとして創業したメーカーにとって、ブランド力を高めることは非常に難しいものだとのこと。多くのデジタルネイティブメーカーは、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアに広告費を投じています。そして可能ならば、テレビCMや看板などにも広告費を割いています。しかし、そのマーケティング費用は非常に高く、次から次へと商品を開発し販売するシーズン商品の場合にのみ広告は有効に機能します。一度購入すれば永く使うことが前提で、頻繁な買い替えを想定してないスーツケースを販売するAwayにとっては、多額の広告費を費やすことは有効ではありません。

そこでブランディング戦略としてAwayは「Here Magazine」という旅行雑誌を出版しました。Hereは文化的なレポートや写真、エッセイ、有名な旅行者へのインタビュー、都市ガイド、地元のクリエイターの紹介など旅行者にとって価値のある情報を提供する雑誌です。Awayのスーツケースを宣伝するためではなく、旅行者と価値観を共有するために発行されています。共通の価値観を持つHere読者は、Awayの価値を理解してもらえるだろうと考えたというわけです。

そして、Awayはスーツケースを購入した顧客に、再びスーツケースを売るのではなく、別の商品を売るという戦略を採用しました。それは、スーツケースに収める梱包袋や衣料バッグ、トイレタリーバッグなど旅行に必要なものを販売すること。Awayは「travel uniform」と呼ばれる旅行に必要なもの一式をAwayブランドとして取りそろえることにしました。ルビオ氏は「Awayの顧客が、他社の旅行携行品を投げ捨てて、Awayへ再びエンゲージしてくれるのを見るのは、本当に素晴らしい体験です」と述べています。

コーリー氏は資金調達に明け暮れているときに、「スーツケースなんて気にしていない」という多くの投資家に出会ったとのこと。そして、ミレニアル世代を潜在的な顧客としてみていないスーツケース業界を「時代遅れ」に感じたそうです。コーリー氏とルビオ氏によると、Louis VuittonやRimowaのような高級ブランドは、確かに「旅行のロマンス」を製品としての形に変えようとしていましたが、あまりにも高価だったとのこと。一方で、SamsoniteやAmerican Touristerのような確立されたブランドは、あまりにも機能性にフォーカスしていたとのこと。ここに、巨大な機会損失があると考えたそうです。

「私たちはミレニアル世代が『モノ』から『体験』へと価値観を変化させているのを見ました。これは、彼らが本質的に『もっと旅をする』ということを意味していました。古くからあるブランドはこの価値観を拾い上げませんでした」とルビオ氏は語ります。Awayの目標は、スーツケースメーカーになることではなく、「旅行のプラットフォーム」になることだとのこと。

投資家のダニエル・グラティ氏は、225ドル(約2万5000円)のスーツケースを買う余裕があって旅行を愛する人は世界中に多くおり、Awayの販売網は今後、アメリカからヨーロッパ、アジアにシフトするとみています。「Awayは顧客に寄り添い、彼らが望むものを追い求め、買いたいと思うモノを作ることに興味を持っています。もしも旅行者が、旅行を計画し、ホテルに滞在しようと考えているなら、Awayには多くのことができるでしょう」と述べ、スーツケースという物理的な製品販売からスタートしたAwayが、旅行という市場で今後さらに活動を広げていくと予想しています。

引用元:https://gigazine.net/news/20180709-away-story/

この記事のポイント

・市場の中に空いているポジションを見つける

高価格帯と低価格帯の二極の争いになっていることに気付いた二人は、その中間の価格帯のポジションが空いていることに気付く

・モノ→コトへ

競争の争点をスーツケースの性能から、スーツケースのある暮らしへとシフトする

・「スーツケース屋」ではなく「旅行の窓口」と定義

「旅行の窓口」と定義することで自社の顧客層が旅行で必要なものならなんでも取り扱う会社になる

あなたは自分を何と定義する?

さて、あなたの業界で誰も手を出していない「空いているポジション」はないですか?

競争の争点を「商品の良さ」ではなく、その「商品がある暮らし」へとシフトできませんか?

「〇〇屋」ではなく「〇〇の窓口」と定義したら、あなたの顧客は何を欲しがるでしょうか?

それともまだ「自分は〇〇屋」であることにこだわり続けますか?

 

 

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